「トムとジェリー」の世界へようこそ
2017/02/06
「八月ね」
新しく担当になったオカマちゃん(と言ってもキレイ系ではなく重量級)はこともなげに言うが、前回尋ねた時には「六月には確実に」という話だったではないか!
アパートの退去予告、家具搬入の段取り等何かと大変なこちらの都合などまったくお構いなしのその態度にはアタマニクルけれど、この国ではもうすっかり見慣れた光景でもあり、目くじらを立てても仕方ないことは既に理解している。
そう。購入したコンドミニアムの件で、三月完成予定から順調に遅れ、当初は四月に、四月になると六月にズレ込んだその予定日が、六月も間もなく終わろうという頃に確認に行ったところ遂に八月にまで伸びたのであった。
実際問題四月末の時点で現場を確認したら、後は室内の内装と外構程度だったので「まあ六月末にはできるだろう」とタカを括っていたが、そこから工事が遅々として進まない。ストライキでもしているのではないかと疑う程現場に人が居ないのである。人夫の段取りが上手くいかないのだろうか。弱小ディヴェロッパーはこれだから困る。
八月にはニッポンに帰るし、こーなればもう好きなだけ遅れるがいい。その分今住んでいるアパートの家賃が嵩むけれど、請求したところで払ってくれるワケでもあるまい。タイに永く居るとこの手の話に対する免疫力は相当強くなるのだ。
一方で「ボケ」具合がハンパぢゃない。
遂に五十代に突入したとは言えアルツハイマーにはさすがにまだ早いと思う中、物忘れのヒドさを始めあらゆるシーンであまりにも「ふわ〜っ」としている自分に自分でビックリする。コンビニの中に入って「あれ?何を買いにきたんだっけ??」など日常茶飯事であり、今日も先程ゴミ袋を両手に持って部屋を出てロックした後、しばらくして鍵を持っていないのに気が付いて管理人に借りたばかりだ。
そしていよいよトンデモナイ事件を起こすハメに。
こんな恥ずかしい話など正直書きたくないが、自分を戒める為に敢えて晒すことにする。
金曜日の午後。いつものようにサウナに言った時のこと。夕方からS氏とシーラチャに出掛けるのでバイクではなく車で出掛ける。
坂になった駐車場に頭から突っ込み、荷物を持って中に入って行く。
何やら外が騒がしいので気になって戻ってみると、なんと自分の車が後ろ向きに「祠」に突っ込んでいるではないか。
慌てて車を移動させる。
その時に確認したが、サイドブレーキは掛かっていなかった。
停めた位置が平坦に近いとは言え、手前は結構な急勾配である。そして私の車はマニュアルであり、普段駐車する時ローギアには入れずニュートラル。軽く引いた為外れてしまった可能性もあるが、おそらくサイドブレーキを引かなかったと思われる(*覚えていない)。とにかく車を降り後ろ側を廻ってテクテク歩いてサウナに入って行く間、最初はゆっくりと、すぐに坂で加速がつき道路を横切って反対側にある仏様を祀った「祠」に突っ込んだ愛車のマーチ君。
周りの人が集まってちょっとした騒ぎになったけれど、コンクリートの縁石とプラスティックのポールが破損しただけで大事には至らなかった。走行中の車やバイクが突っ込んだりしなくて本当に良かったし、高級車が駐車していなくて助かった。あと、途中で気が付いて車を止めようとしてコケたりしたら最悪だ。まるでコントではないか。まあ、ある意味運には恵まれているのだ。
それにしてもである。
あの状況でサイドブレーキも引かずに車を離れたとしたならば、いくらなんでも「ふわ〜っ」とし過ぎだし「ボケる」にも程がある。ブレーキとアクセルを踏み間違える老人と大差ないではないか。
あまりのことにショックを受けたが、同時に思わず笑ってしまうのだった。現実の世界で「トムとジェリー」のような場面に遭遇し、それを自分が演じているのだから無理もない。
もし、今ニッポンでバリバリ仕事をしていたらこんなことが起こりうるだろうか。
実際にはどーか分からないけれど、おそらくタイで「フラフラ」している件と無関係ではあるまい。何もかもが「ふわ〜っ」としたこの国で長い間「ふわ〜っ」と生きていればそーなってしまってもちっともおかしくなどないのだ。
そして、それこそがこの国の「魅力」であり「魔力」であるという恐ろしさにあらためて気付いてしまった。
ひょっとしてもう二度と
戻れないのかもしれない。
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