世の中には避けなくてはならない質問があるのだ
2019/10/17
「妊婦さんだったのか!」
ドンムアン空港のチェックイン待ちで後ろに並んでいたニッポン女子が教えてくれなければ分からなかった。振り返ってみればカウンターで手続き中の彼女のお腹廻りがかなりせり出しているのが確認できた。
いったいどれだけ時間が掛かるのか?と心配になる程の鬼行列をひとりですり抜けて行った彼女が「どんな力を持っているのか!?」と騒いでいた我々はその事実を知って恥ずかしい思いをしたワケであり、おそらく中華系であろうその女性から英語で「シンガポール行きの列はここですか?」と尋ねられ「そーですよ」と答えた末後ろに並ぶよう誘導したのはそもそも私だったのである。
その時は正面だった為かまったく気付かなかった。
しかし、もし仮に(アレ?ひょっとして妊婦さんかな?)と思ったとしても、それをご本人に確認してからその事実を係員に伝えて長蛇の列をすっ飛ばす手伝いなど私には到底できない。だってそこには二つのハードルがあるではないか。
①「あなたはひょっとして妊婦さんですか?」と本人に尋ねる。
②「君君。彼女は妊婦さんだから優先的に列の前に行かせて差し上げなさい」と係員に指示する。
二つ目はまだ良いとして、前者は相当キツい質問である。例えばとてもキレイなタイガールに「あなたはひょっとしてレディーボーイさんですか?」と聞くのに近い失礼さがある。これはいくらジェンダーフリーのこの国においてさえゼッタイに口に出してはイケナイセリフのひとつと言えないか。
ちなみに私は過去一度だけこの質問をカマしたことがある。おそらくは女子だと思われる相手に・・・。
場所はバンコクのクラブ集合地帯某「R.C.A」の某店の前、時間はもちろん深夜であった。そのコは小柄でなかなかのカワイコちゃんで声もフツーだったので(まさかオカマちゃんではあるまい)と一緒に仲良く踊っていたのだが、そのうち向こうからキスをしてきたりダンスもエロティックモードになったりして、同席していた日本男子から「〇〇さん。彼女オカマちゃんちゃいまっか?」と耳打ちされ急にビビり始めたのである。で、店が終わって別れる段になり連絡先を聞こうか聞くまいかという流れでどーしても興味を抑えられなかった。元々私はデリカシーのない人間なのだ。
それにしてもアレはヒドかった。今の私ならあんなことはゼッタイにしない。他に方法があるだろう。例えば本ではなく友達に聞くとか、さりげなく股間を触ってチェックするとか。いやいや日本なら完全にアウトかもだが、タイのクラブ内でならばサイアクパンチで済みそうだ。
結果どーなったか。
今でもよく憶えているが、ものすごくコワイ顔をして睨まれた。よく見掛ける「キレて激情」というのではなく、屈辱的な表情だった。そして、何も言わず、「フンッ」ときびすを返しサッサと帰ってしまった。メチャメチャ怒っていたのは明らかであり、(しまった!)と思ったがあとの祭りである。未だに胸に刻まれている私の黒歴史のひとつだ。
さて、話が脱線したので元に戻すと、バンコクでアテンドしていた某社長をハノイに送り出す際ドンムアンのチェックインカウンターで一緒に並んでいた我々。空港到着は二時間前にも関わらず、恐ろしい大行列で三十分経ってもちっとも進まずイライラしていたという状況である。間に合わなければその後も当然お付き合いせねばならず(乗れなかったらどーしよう?)と、内心ビクビクしていた。
そんな中「あれ?あの野郎いつの間に行列をスルーしていったのだ!?」と日本語で文句を言っていたら、後ろで聞いていた女子二人がわざわざ声を掛けてくれたのだった。こんなド変態の私になんと親切な人達だろう。
話を聞くと二人共OLとのことでタイを満喫した後シンガポールに行くと言う。宿泊は某「マリーナベイサンズ」。屋上にプールがある一泊300$越え?の高級ホテルだ。飛行機はエアエイジアでもホテルにお金を掛けるというのがいかにもニッポン女子らしい。6月にはまた二人でフランス旅行するらしく、イマドキのOLはいったいどーなっているのだ!
パッと見アラウンド30の二人。一方は長身黒髪でワンピース姿、一方は小柄で耳出し刈り上げのベリーショートで襟付きブラウス&パンツ姿。(う〜む。ひょっとしてゲイカップル?)と私が思っても不思議のない組合わせなのだった。
しかし、もちろんそんなこと聞けるはずもあるまい。「あなたはひょっとしてトムボーイさんですか?」というのは、前述のふたつと比べても遜色のないくらいおそろしい質問と言えよう。
そこで私はふと思った。それらの問いが何故タブーなのか?と。
共通して言えるのは、もしそれが間違っていたら「大変なことになる」ということだろうか。妊婦さんではなくタダのおデブちゃんだった場合、オカマちゃんではなくフツーのキレイな女子だった場合、トムボーイ(おナベちゃん)ではなくフツーのボーイッシュな女子だった場合、一般的マナーとしてはとても失礼になるのではなかろうか。
では、もし仮に正解だったらどーなるか。いずれの場合もこちらが得することはない。中華系女子が妊婦であれば面倒なことになるし、R.C.Aのカワイコちゃんがレディーボーイであればキスの味を思い出して「ウェーッ」となるだけだし、O.Lがトムだったとしても(やっぱりなあ)と思う程度の話。
となればやはりそれらは誰も得することのない避けなくてはならない質問なのだ。う〜ん。勉強になったな(?)。
結局、その後更に三十分以上待たされた末ようやくチェックインが終わり、搭乗までの時間はかなりタイトだった。社長は慣れたもので平気な感じだったけれど、気が小さい私は実際かなりビビっていたのだ。ドンムアン空港の国際線は時間帯によってそーいうことがあるからメチャメチャコワイ。
というワケで、皆さんはG.W.をいかがお過ごしだろうか。
私は明日から先日の某社長の友人であるゲストのバンコクツアーをアテンドする。多少なりともギャラをもらうのでアルバイトということになるが、発着空港はスワンナプームであり、それだけでも若干ホッとしているのだった。
確かに印象的な旅にするには多少のトラブルやアクシデントがあった方が良いのかもしれない。
でも、飛行機に乗れないのだけは、
どーにも勘弁して欲しいのである。
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