刺激されたり削がれたりする創作意欲
2017/10/24
レンタルサーバー会社から更新の通知が来て、あれから一年経ったことを知る。
先回はしばらく悩んだ末にとりあえず一年分だけ料金を払った。理由はタイトルと程遠い内容の記事を書き続けることの不毛さである。しかし結局、データを消してしまうよりは、と、存続の道を選んだワケだ。当時はハノイの地で悩み続ける日々であり、思い返すだけでも胸が痛む。
今回は即決でやはり一年間更新。ひょっとしたらタイに戻るかもしれないし、そーなればまた読者にネタを提供できるだろう。但しパタヤに住めるかどうかは分からないから微妙なところではあるが。
時間の流れが早いとか遅いとかいう話ではない。たった一年での状況の変化を考えるとちょっと不思議な感じがするだけだ。
ちなみにその前は二年契約だったので更新の知らせは来なかったけれど、遡ってみればまだタイでふわ〜っとした日々を過ごしていたようだ。あの頃はたしか、タイで仕事を探しつつ日本へ戻ることも検討していたのだっけ。その為にわざわざ好きなニッポン女子を作ってみたりもしたが結局は徒労に終わった。そして、数ヶ月後にヴェトナムへ移住することになるなんて・・・・・・。
考えてみればここ二年で本当に様々なことがあった。激動と言ってもいいくらいに。全ての原因は仕事だ。50才を過ぎてまた一から仕事を始めるというのがどれほど大変なことなのかが身に沁みてよく分かった。
若い頃のように「楽しい仕事がしたい」などと言っていられないのは承知の上で、少しでも興味のあることを収入にできないものか、と模索して来た。海外でなら何とかなるのでは?と、甘い夢を追いかけたもののやはりそれは儚く砕け散った。
「働くとしても残りあと十数年か。もう何でもいいや」
すっかり投げやりになってしまった。お金もなくなったし、根拠のない自信も希望も失った。そーなるともうダメだ。思考は全てネガティヴへと向かう。
旅行用の小さなバッグを持って離島にやって来てから二ヶ月が経つ。
今何を思うかと言えば(オレってつくづく協調性がないなあ)ということ。どんな場面においてもまず「こーしたい」「これはやりたくない」という考えがまず頭に浮かび、大体においてそれは他の人達とは違うチョイス。一応周りに合わせるポーズだけはとっているけれど、(自分だけ良ければいい)というその発想に我ながら呆れてしまう。
やはり一人きりで生きて行くしかないのかなあ。果たしてそれは可能なのだろうか。
もう一度よ〜く考えてみる必要がありそうだ。
そんな中、毎日フェリーに長時間揺られる生活が続く。
車検の指定工場の認可を受ける為のテスト期間中お客様から預かった車を本土まで運び陸運局にて車検が通った後で持って帰って来るという役目なのだが、朝10時から夕方5時までフェリー内で拘束されるという、怠け者の私にはもってこいの仕事でありその間ずーっと本を読んでたまに眠るという繰り返し。まあフツーに考えれば退屈だろうし船に乗り続けることを皆嫌がるけれど、自分としては何の問題もない。乗客があまりにも多い時は居場所が狭いもののそれも滅多にないし。
ただ、問題は読む本のネタがない件。できれば小説がいいのだけれど島の本屋は在庫が極端に少なくチョイスの幅が狭過ぎるのである。
で、先日たまたま本土で一泊する機会があり、そのタイミングで筒井康隆大先生の文庫化されたばかりの本を一冊手に入れた。小説ではなく「創作の極意と掟」というタイトルで、おカタい内容ではなく指南書というよりはエッセイに近いだろうか。「ふむふむ」「なるほど」と読み進めるうち、元々文章を書くことが好きな私としては当然のごとく創作意欲が湧いて来る。そう。何しろ時間はたっぷりあるのだ。
前々から温めている構想があるものの何回書いても途中で行き詰まってしまう。そのストーリイに再々々々度挑戦をしてみようか。というワケだ。
一方、私には創作意欲を一気に失わせる手段もある。
いろんな作家の作品を読みつつ、場合によっては「この程度ならオレにだって楽勝で書ける」という思いを持ったとしても、ある作家の本を読むとそんなのはすぐに消し飛ぶ。
村上春樹氏である。
氏の小説を読む度、「あ、コレはスゴいわ。こんなカッチョイイ文章オレにはゼッタイに書けない」と落ち込む。→自分の書いたモノがつまらなく感じる。→書く気なくなる。という法則だ。
だから、今回も書き始める前に確認しておこうと島の本屋で二冊の本を買った(「羊を巡る冒険(上)」「羊を巡る冒険(下)」)。三日前のことだ。
そして、間もなく読み終わるが、やはり氏の文章はカッチョイイし、メッセージ性も強く感じる。
もちろんカッチョイイ文章である必要はないのかもしれない。自分には自分の文体がある。しかし果たしてオレの文章で読者にメッセージは伝わるのだろうか。というかそもそもメッセージ自体が明確ではない気がする。伝えたい何かがもっと確固たるモノでなければ小説を書く意味なんてないのでは?
とまあ、
こんな具合なのであった。
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